店舗デザインの意味

ただかっこいい、オシャレだというだけの店舗デザインではいけません。

素敵な調度品を揃えているオシャレなお店には、どのようなサービスを提供しているかに関わらず一度は足を運んでみたくなります。 それはお店選びの基準のひとつにデザイン的な要素が含まれているからです。 「あそこにオープンしたお店オシャレな外観をしているよね」「ショップの看板になみなみならぬ店長の拘りを感じるよ」と噂になるようなお店なら、 ミーハーな人でなくても行ってみたくなるものです。 このように好奇心を刺激する店舗デザインがいいと考えていらっしゃるオーナー、あるいはこれから出店を考えている未来のオーナーさんも多いようですが、 本当に店舗デザインで大切なのは見た目が与える印象ではありません。

もちろん最初の来店を促すには決め手となる第一印象を重視するのもよくわかりますが、それだけではリピーターが定着するとは限りません。 面白がって1回は来てもらえますが、ただデザインがいいだけのお店ではすぐに飽きられて他のお店に流れてしまうかもしれないのです。 昔から日本の男性の間には「美人は3日で飽きる」という伝説がありますが、これは人間だけに当てはまることではなく、また女性側も飽きやすいのです。 なので「美男子は3日で飽きる」というのも間違いではなく、つまりは見た目だけではいつまでも気を惹きつづける事は困難であると言えます。 最初は「わぉ、とんでもなくゴージャスなデザインだね、ワンダフル!」と思ったショップでも、2度3度と通ううちにその感動は薄れていくので、 あまりそこだけに力を入れた店舗デザインでは安定した経営を持続させることは出来ません。 どんなに美人なお嫁さんを貰っても3日もすれば見慣れてしまうので、結婚して一週間もすれば旦那さんにチヤホヤされることもなくなるのです。 一回目の来店では「オシャレなお店だったね、また今度みんなで来ようよ」という話になっても、 2度目の来店では「まぁきれいな店だけどサービスはいまいちかな」となり、 3回目にもなると「ここも飽きてきたね、次は隣町にオープンしたばかりのお店に行ってみたいな、あそこのマスターは一流の老舗で8年間も修行してきたって 噂だし期待で胸が高鳴っちゃうよ」とお客さんが定着せずに流れていってしまうのです。 その原因は明らかにデザインしか見所の無い店舗デザインだからで、もっとお客さんのことを考えて店舗設計をしていればそうはならないのです。 一見素敵な空間に見えるけど実際にそこでしばらく滞在してみると、思ったよりも居心地の悪さが気になったり落ち着かない気分にさせられる、 そんなショップでは常連さんが増える前に経営難に陥ってしまうでしょう。 長い下積み期間を経て念願の自分のショップを手に入れるともなれば、気合の入ったデザインでお客さんを喜ばせようと考えたくなるのも仕方の無いことかもしれません。 ですがそれを利用する人間のことを全く無視した設計で、デザインばかりを優先させた店舗では自分もお客さんも満足はせず、不満が目立つようになってきます。 最初こそ雑誌に取り上げられたりオシャレなお店だと噂になって有頂天になれる時期が到来するかもしれませんが、 その瞬間は思いのほかあっという間に過ぎ去ってしまい、後には閑古鳥の鳴く斬新なデザインだけが取りえの流行らないショップがあなたには残されるだけなのです。 飲食店なら空間も提供しますので店舗デザインもおろそかにはできませんが、一番大切なのはおいしい料理を食べていただくことです。 なのに肝心の料理のメニューは適当にして、高価なイスとテーブルを並べて贅沢な食事空間を用意しただけではお客さんの舌は満足させられません。 その店舗ではお客さんが支払う代金の対価に何を提供するのか、その質は代金に見合うレベルに達しているか、それができていないのなら 店舗デザインがどんなに見た目が良いとしても、決して一流のショップにはなれません。 ここを勘違いしてとにかくオシャレな店舗にしようと力みすぎているオーナーさんも大勢みえますが、良い店舗デザインとはそういうものではないのです。